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2017年2月18日土曜日

ドイツが再生可能エネルギー政策に転換したのはなぜか。その課題や発電量の割合

再生可能エネルギー

ドイツのエネルギー政策の転換


2011年にドイツは2022年までに原子力発電から完全撤退することを法制化し、再生可能エネルギーの本格導入を決定しました。










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2050年までに再生可能エネルギーの国内の発電比率を80%にまで引き上げることをアンゲラ・メルケル首相は目標としています。




アンゲラ・メルケル首相
Photo by CDU Sachsen




それまで世界をリードする原発推進国だったドイツ。どうしてそこから転換したのか、現在の発電比率はどうなっているのか、デメリットや問題点は何か、今後の展望についてなど、ドイツの再生可能エネルギー政策の現状を見ていきたいと思います。













ドイツが脱原発に転換した理由


ドイツのメルケル政権がそれまでの原発推進の考え方から、まだコストや負担の大きい再生可能エネルギーへと180度政策を転換させたきっかけは、私たち日本で起きた災害でした。



2011年3月11日に起きた東日本大震災。それから数日のうちに福島第一原子力発電所で立て続けに水素爆発が起こり、大量の放射性物質が放出されます。


ドイツ連邦政府は地震発生から4日後には「原子力モラトリアム」を発令し、稼働していた17基の原子炉の安全点検を行いました。



ドイツが原子力発電を導入したのは1975年にまでさかのぼります。しかし、メルケル首相は福島の事故映像を目の当たりにし、「原子力発電所を安全に稼働させられるか、首相として責任が持てない」とこれまでの政策を一転させることを決意します(2000年に一度、稼働開始から30年ほどで脱原発を達成する合意を企業との間に結んでいましたが)。



3ヵ月のモラトリアムを経て、その1ヶ月後に2022年までに原子力発電所から完全撤退する法案を議会で通過させたのでした。




もともと世界の中でも環境先進国としてリードする位置にいたドイツですが、もともとクリーンなエネルギーとして原発を推進してきた国が即断で逆方向に歩み始めたことになります。しかし、福島原発の事故がきっかけだったのならば、そのニュースは全世界が目にしていたはずです。




そんな中、ドイツだけがきっぱりと原発と手を切ることを決め、さらに現在も93%の国民が再生可能エネルギーへの転換を支持しているのはなぜでしょうか。






それはどうやらもっと時代をさかのぼってみる必要がありそうです。1930~40年代にかけ、ナチスドイツは原子力爆弾の開発を行っていました。ところが連合国側が完成を阻止するべく工場や重水輸送列車への攻撃により、実現されないまま1945年4月30日の降伏を迎えることになります。



その一方アメリカでは、ユダヤ系アメリカ人であるロバート・オッペンハイマーを中心としたマンハッタン計画が進められ、原爆を完成させます。そしてドイツの降伏から3ヶ月後に同盟国である日本の広島と長崎に落とされたのでした。自国でも開発を行っていた原爆が、同盟国に落とされ23万人に近い人が亡くなった事実は他人事ではなかったでしょう。





さらにそれから40年以上経った1986年4月26日に旧ソ連で現在のウクライナにあるチェルノブイリ原子力発電所で起きた事故は直接ドイツも影響があった出来事でした。チェルノブイリから1500km離れているミュンヘンも放射能汚染が確認され、1万9000ベクレルのセシウム137が検出されています。




チェルノブイリ原発事故による放射能汚染マップ
チェルノブイリ原発事故による放射能汚染マップ



ドイツ南部の広い地域で土壌や野生動物、植物からもセシウム137が検出され、やはり今も自然界に高濃度で残存している地域があります。「半減期」という言葉をご存知の方も多いかと思いますが、セシウム137が自然に崩壊して半分になるには、30年という月日が必要となります(2016年がまさに半減期にあたる年でした)。



そのような経緯があった中で、2011年に福島の原発事故が起きたのです。ドイツ国内には当時17基の原子力発電所が稼働していたのですが、メルケル首相だけでなくドイツ国民の多くが原発に不安を抱きメディアも含め今もその政策を支持しています。これだけ思い切った政策を継続させられるのも、背中を押す国民がほとんどだからなのです。



また、メルケル首相がこれだけ大きな決断をした要因のひとつに、福島原発の事故を受けて国民が野党で原発に反対する緑の党を支持したこともあったようです。キリスト教民主同盟(CDU)、キリスト教社会同盟(CSU)、自由民主党(FDP)の連立からなるメルケル政権はいずれも原発を推進していた党でした。



福島の事故直後から国内で原発反対のデモが起こり、3月27日にはバーデン・ヴュルデンブルク州の州議会選挙で緑の党が圧勝。数十年にわたって単独で政権運営をしてきた同州が、緑の党と社会民主党(SPD)による連立政権となった瞬間でした。



こうした出来事からメルケル首相は政局の面から考えても、脱原発に踏み切る必要があったのでした。








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再生可能エネルギーへの転換にどのようなデメリットや問題点があるのか

このようにしてドイツ政府は電力を原子力発電から再生可能エネルギーにシフトすることを決めたわけですが、もちろん課題や問題も存在しています。





再生可能エネルギーを発電の中心に据えたときのデメリットとなるのが、電力の供給が不安定になるということです。太陽光発電、風力発電などは特に気象条件に大きく左右されてしまうため、必要な電力に満たない事態が想定されます。



つまり、エネルギーをあまり供給できる状態ではないにもかかわらず、設備を維持するためのコストはかかってしまうため負担が大きくなってしまうのです。



特に天気が悪いときには発電量が低くなる一方で、使用する電力は上昇します。この課題に対処するためにはフレックス燃料や石炭発電を増やし、熱併給発電(コジェネレーション)を減らす必要があると、ドイツ水道・エネルギー連邦連合会(BDEW)の責任者ステファン・カプファーラー氏は説明しています。





また、ドイツでは各家庭でも電力を貯めておける機能が備わっている太陽光発電パネルの普及が進んでいるため、発電量が少ない時期になってもそれまでに余剰の電力を蓄電しておけば電力不足にも対応できるという意見もあります。









ドイツが再生可能エネルギーに注力を傾けたことによって、近隣国がデメリットを被ってしまっている事実もあります。



風力や石炭発電によって生じた余剰電力はしばしばオーストリアやチェコ、ポーランドなどの国に輸出されます。ドイツから輸出された電力の価格がそれぞれの国よりもはるかに低価格であるために、自前の風力発電や水力発電の会社が圧倒的に押されてしまっています。



オーストリアのアンドラ・ルプレヒター環境相は「ドイツの再生可能エネルギー革命が、オーストリアやヨーロッパの同革命を困難なものにしている」とコメント。国の援助金がなければ風力や水力の発電事業が立ち行かない状況を訴えています。




また、フランスとの電力の輸出入は輸入量の方が多い状況となっていますが、そのフランスでは電力の75%が原子力によって生み出されています。他国のエネルギー政策に口を出すわけにもいかず、かといって再生可能エネルギーによって作られた電力だけを輸入することもできないために起きている矛盾のひとつです。






その一方で、ドイツの電気料金は上昇の一途をたどっているという矛盾も見られます。



ドイツ水道・エネルギー連邦連合会(BDEW)によると、年間消費電力が3500キロワット時の標準世帯の1カ月の平均電力料金は、1998年から2013年までに約68%上昇した。電力料金の中に再生可能エネルギー拡大のための賦課金、電力税などの税金が占める比率は、1998年には24.5%だったが、自然エネルギー拡大政策のために年々増え続け、2010年には50.2%に達した。つまりドイツの電気代の半分が、国のエネルギー政策・環境政策に基づく税金や賦課金なのだ。
脱原子力を選択したドイツの現状と課題より




近隣国に低価格で電気を輸出しているドイツ国内では電気料金の上昇のために貧困に拍車がかかっている世帯も生まれています。



ドイツ国内で勢力を伸ばしている右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」などはこのような事態はメルケル政権の失策によって生まれたものであるとして批判しています。




エネルギー政策の転換にともない、再生可能エネルギー設備への投資や原子力発電所の廃炉、放射能廃棄物の処理など多額の費用が必要になるだろうと目される中で、さらに2016年3月にエネルギーコンツェルン、RWE、E-on、ヴァッテンファルの大手電力会社4社が連邦政府を相手取っての訴訟を起こしています。




2011年の原子力モラトリアム発令で原子炉を停止しなければいけなくなったために経済活動を制限され、憲法が保障する財産権を侵害され、またエネルギー政策の転換により収益の減少が避けられないという趣旨の訴訟でした。損害賠償の請求額は少なくとも53億ユーロ(7420億円)に達すると見られています。





もし連邦政府が訴訟で負ければ賠償金や訴訟費用を負担しなければならなくなり、ドイツ国民にさらなる税金が課せられることになります。





ドイツの発電比率

さまざまな課題を抱えながらも前へと進む道を選んだドイツのエネルギー政策ですが、現在はどのような発電比率になっているのでしょうか。エネルギー収支統計協会(AGEB)の2016年のデータを見てみましょう。



  • 再生可能エネルギー 29.5%
  • 褐炭(もっとも石炭化度が低い石炭) 23.1%
  • 無煙炭 17%
  • 原子力 13.1%
  • 天然ガス 12.1%
  • その他 5.2%


再生可能エネルギーをさらに発電方法別にすると、



  • 風力 12.3%
  • バイオマス 7.9%
  • 太陽光 5.9%
  • 水力 3.3%

となります。











ドイツには100%再生可能エネルギー地域に認定されている自治体が2015年時点で90ヵ所に上りましたが、その年は特に再生可能エネルギーの割合が上昇した年でもありました。しかし、2016年は天候不順などの要因もあり、上昇率はやや低調となっています。





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☆ニュース・イングリッシュ☆


  • 再生可能エネルギー…renewable energy
  • 政策を転換する…change one's policy
  • 電力の供給…power supply
  • 原発事故…a nuclear accident













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参照
http://politas.jp/features/6/article/389
http://www.newsdigest.de/newsde/features/8134-erneuerbare-energien-in-deutschland.html
http://www.dw.com/en/what-happens-with-german-renewables-in-the-dead-of-winter/a-37462540
https://www.theguardian.com/environment/2016/oct/11/germany-takes-steps-to-roll-back-renewable-energy-revolution
http://reneweconomy.com.au/renewable-energy-production-stagnates-germany-2016/

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