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2017年11月4日土曜日

北朝鮮への経済制裁の影響や効果について

国連などの経済制裁は効果を上げているのか?




2006年の弾道ミサイル発射に対する措置として、国連による北朝鮮への経済制裁は始まりました。




金正日(キム・ジョンイル)総書記が2011年12月17日に死去し、最高指導者の地位を継承した金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長はさらに強硬な外交姿勢を取り、弾道ミサイルの発射や核実験の実施を繰り返しています。



そのたびに国連は経済制裁を採択し実行しているのですが、今回はそれがどのような影響や効果をおよぼしているのかにクローズアップしたいと思います。






どのような経済制裁が行われてきたのか?

北朝鮮への経済制裁は国連主導によるものと、各国が独自に行っているものの2種類があります。




北朝鮮への経済制裁の内容。安保理決議と独自の措置について



独自の経済制裁は外交的圧力の手段として行われていることもありますが、両者とも基本的には兵器・核開発を抑制する目的のもとに実施されています。



国連の北朝鮮に対する経済制裁は2017年9月12月に採択された安保理決議第2375号までに10度行われています。ただ、2013年2月12日の第2094号までは、初めて経済制裁が採択された2006年第1695号の内容を徐々に強化、拡大したものでした。




第1695号で決定した内容は、


「核、弾道ミサイル、大量破壊兵器の計画に関連する物資と資金の移動を凍結する」ことを国連加盟国に要求する


というもの。


そこから、軍事開発にかかわる指導者の資産凍結や、加盟国への制裁の実施が要求から義務付けになるなど発展していきます。


しかし、金正恩政権の軍事的挑発はその後も続いたことから、ミサイルや核開発につながる新たな資金源を断つべく2013年2月12日第2094号では北朝鮮が加盟国内で新たな銀行の開設を禁止したり金融取引も制限するようになりました。






忠告としての経済制裁から抑止としての経済制裁へ

さて、こうして2016年までに7回の経済制裁決議が採択されます。制裁の内容を強化しているのにもかかわらず、北朝鮮の兵器開発や軍事的挑発は止まず2017年になってアメリカでトランプ大統領が誕生して以後はさらに緊張が高まり弾道ミサイルの発射や核実験の実施が相次いでいます。




そもそも国連の経済制裁は各国によるものとはちがい、懲罰の手段としてではなく過去の安保理決議案に違反した行動を止め、国際社会に緊張を与える軍事行動の政策を転換するよう促すものです。



また、朝鮮戦争(1950〜53年)のころからすでにアメリカは北朝鮮に対して経済制裁を行ってきたため同国としては免疫があり、国連の経済制裁の内容が兵器関連に絞っていたために全体の予算の割合としてはあまり大きくなかったことなどが効果の低かった理由として挙げられます。



こうした背景もあり、金正恩委員長は2013年3月に核と経済の開発を両立させる「並立路線」を実現すると表明し、強気な姿勢を打ち出したのでした。



そこで2016年11月30日の安保理決議第2321号以降、北朝鮮の外貨獲得を制限することによってミサイルや核開発に回す資金の流入を抑える方針が取られます。



第2321号で石炭、そして第2371号で鉄鉱石、鉄、方鉛鉱、鉛、海産物を北朝鮮は国連加盟国に輸出できなくなります。



といっても実は北朝鮮の輸出相手はほぼ中国で、2016年度では88%を中国が占めています。そして、石炭、鉄鉱石、鉄、方鉛鉱、鉛、海産物の輸出品目を足すと、対中輸出の90%近くに達することになります。




これは北朝鮮の同盟国である中国がたびかさなる安保理違反にこれ以上擁護できなくなったことから以上のような品目の輸出禁止に同意した背景があります。




加えて2017年9月12日の第2375号ではアメリカの強い要望で盛り込まれていた全面輸出禁止は外されたものの、北朝鮮への石油精製品の供給は年間200万バレルまでという上限が設けられました。





輸出制限や石油関連製品の供給制限は効果があるのか?

ではこうした輸出制限や石油関連製品の供給制限によって効果は生まれるのでしょうか。



結論から言うと、第2321号以降の経済制裁の効果や影響は確実に出ているようです。ただ、北朝鮮の軍事拡張路線を変更させるという決議の目的からすると、その実現は難しいのが現状です。



確かに北朝鮮国内では経営が悪化している工場や自動車貿易が縮小気味で外貨を獲得する力が以前より弱まっています。



また、石油輸入制限が始まった9月には2016年後半と比べて2倍近くにまでガソリンの平均価格が上がっていて、燃料価格の上昇が起こっているようです。



輸出制限による損失は13億ドルにもおよび、北朝鮮の主要輸出品目である繊維製品だけでも年間8億ドルの損失になります。



かなりの影響を与えているように思えますが、北朝鮮は他の国と異なり国内で経済のほとんどがまわっています。同国のGDPはおよそ400億ドルほどだと考えられていて、13億ドルはそのうちの3%に当たります。



先の例のように影響は出ているようですが、もともと厳しい経済状況下で生活することが常となっている国であるだけに政策を大きく転換するにはいたらないのではないでしょうか。また、2016年には経済成長率がこの7年でもっとも高い約4%だったことも北朝鮮にとっては経済制裁を耐えうる要因となっています。




さらに、石油の輸出の全面禁止が今後の経済制裁で行われる可能性がありますが、実は北朝鮮では近年、太陽光発電の導入が進んでいて家庭の電力も再生可能エネルギーに転換しつつあります。





科学技術を使ってエネルギーを生み出す一方で、仮に輸出がストップしても燃料は動物や人の労力に切り替えることで消費量を減らし、備蓄してある石油で少なくとも1、2年は耐えられるだろうと考えられています。







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参照

http://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-squeeze-idJPKCN1BP0ST
https://www.cfr.org/backgrounder/what-know-about-sanctions-north-korea









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