南アフリカのズマ前大統領が起訴。その経緯とは

2009年から続いていたズマ大統領の汚職疑惑。どうして今起訴されたのか





2018年2月14日に南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領が辞任。そして1ヶ月が過ぎた3月16日に16の罪状で起訴されました。

しかし、ズマ前大統領はすでに2009年に汚職の容疑が不起訴になった後も、さまざまなスキャンダルによる批判を受け続けながら9年近く大統領の座に座っていました。


就任以来スキャンダルが絶えなかったにもかかわらずどうして任期1年を残すくらいまで大統領を続けられることができたのか、そしてようやく辞任、起訴にいたったのはどうしてなのでしょうか。


今回は南アフリカのズマ前大統領の起訴にクローズアップします。






ジェイコブ・ズマ

ズマ前大統領は1942年、クワズール・ナタール州北部の貧困家庭に生まれました。父親が15歳のときに死去してからは家計を助けるために働きに出ました。その2年後にアフリカ民族会議(ANC)に入党。その3年後には軍事部門に入り、当時のアパルトヘイト政権に対抗する活動を始めます。


しかし、翌1963年8月に国家転覆の容疑で逮捕され有罪判決を受けます。21歳だったズマ氏はケープタウンから12km沖合にあり現在は世界遺産に登録されているロベン島に収監されるのですが、獄中ではアパルトヘイト撤廃を後に実現するネルソン・マンデラ氏と一緒でした。


10年間の獄中生活ののちに釈放されますが、ふたたびANCに戻りますが南アフリカ国内でのANCの活動が禁止され、国外追放となります。


1990年に活動禁止が撤廃され、ズマ氏は帰国します。1999年にはタボ・ムベキ政権下で副大統領に就任し、次期大統領として目されるようになります。


ところが2005年に詐欺事件の裁判でズマ氏の名前が上がったことで副大統領を辞任することになります。2009年に汚職容疑が不起訴となった2週間後に大統領に就任。その後も自宅改装への公金流用やレイプなどの疑惑が続くものの大統領権限で訴追をまぬがれ、2014年の2期目をかけた選挙戦にも勝利します。


2018年2月になり膨れ上がる汚職嫌疑の数に加えて経済政策の失敗に国民からの不満が爆発。退陣を求める抗議活動か活発化します。






これを受けてANCは即時辞任を求め、応じない場合は国民議会(下院)で不信任決議を採決するという意向を表明します。


2月14日にズマ大統領は党の決定に反発しつつも辞任を発表。翌日にANC議長で副大統領だったシリル・ラマポーザ氏が大統領に就任します。そして3月16日に16の容疑で起訴されたのでした。






どうしていまになっての起訴なのか

ズマ氏は1990年に副大統領を務めていたときに300億ランドのフリゲート艦購入の際金銭を受け取った汚職の罪の他、詐欺、恐喝、マネーロンダリングなどの容疑がかけられています。フリゲート艦に関する事件は贈賄側のシャビール・シャリクが既に15年の刑が確定していて、それを含めて783件の汚職嫌疑がかかっています。


2009年の就任前後からすでにさまざまな疑惑がつきまとっていたズマ氏の起訴がいまになって行われたのはどうしてなのでしょうか。


まず第一に与党ANCの存在です。1994年に政権をになってから現在にいたるまで与党でありつづけてきたANCは民主化の立役者でありその歴史も100年以上前にさかのぼります。アパルトヘイトの推進をしていた国民党の流れを組む民主党(DA)が野党第1党ですが、民主化を確立したANCとの支持率は大きな開きがありました。


しかし、ズマ前大統領の相次ぐスキャンダルや失業率の上昇(20%以上に跳ね上がった)から学生など若者を中心に不支持が広まっています。2019年には総選挙を控えていることから、ANCとしてはこれ以上支持率を下げるわけにはいかず、2017年12月に汚職撲滅を掲げるラマポーザ氏を議長に選出し、今回の退陣へとつなげたのでした。


次に、ズマ氏自身への人気。悪評や疑惑の絶えないズマ氏でしたが、アパルトヘイト撤廃を実現した戦士としての人気がありました。マンデラ元大統領の片腕としても活躍したズマ氏でしたが、その実現から四半世紀以上が経ち、現在の若者にとってはそうしたイメージよりも疑惑と失政を重ねている指導者という印象が強いのかもしれません。


最後に2009年に大きな問題となった「スパイテープ」の存在です。これは当時ANCの議長だったズマ氏に汚職疑惑が持ち上がり、起訴の申請が行われたとき、ズマ氏側の弁護団が提出した録音テープのこと。南アフリカ国家検察局の前局長ブレラニ・ングクカ氏とエリート捜査集団「スコーピオンズ」の前責任者レオナルド・マッカーシーが共謀して政治的利益をこの事件で得ようとしている会話の内容が録音されていました。このスパイテープの提出によって検察側は訴追を断念せざるを得なくなったのでした。


その会話にはマッカーシー氏とムガベ元大統領も共謀している内容が含まれ、ANCとしてもズマ氏に強く出られない状況となりました。


しかし、野党のDAはその後もズマ氏の汚職疑惑について調査を続け、2016年にはハウテン高等裁判所も事件の起訴が必要であることを認めます。2017年10月、最高裁判所も訴追をするべきだという決定を出したことも今回の起訴につながる要因となったのでした。













参照
https://uk.reuters.com/article/uk-safrica-politics/south-africas-zuma-may-challenge-decision-to-prosecute-him-enca-idUKKCN1GT0PI
http://www.bbc.com/japanese/43068229
https://www.news24.com/Analysis/5-questions-about-zumas-prosecution-answered-20180317







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